和則は僕のことを“父親”だと認識しているし、「海外赴任で日本になかなか帰ってこれない」と言う僕の嘘も信じている。
危険を顧みず、たまに様子を見に会いにいったりもするが、そのときも和則は“僕が海外赴任中”、自分の生活を楽しそうに話し聞かせてくれる。
「父さん、野球部は大変だけど楽しいよ。父さんが買ってくれたバットはかっこ良くてみんな羨ましがってた」と、ちょっとはにかんだように笑った笑顔が忘れらない。
椿紀から聞いた。和則から直接聞かされたわけじゃないが。
『和則は父親が大好きなの』だ、と。
たまにしか帰ってこない、それこそ嘘だらけでどうしようもないこんな僕を“父親”と認めて、受け入れてくれる。
僕は―――最初から子供を作るつもりは毛頭なかった。
前述した通り守るものができると、ひとは弱くなるから。
それに―――僕の体の中に流れる古からの忌々しい血を根絶やしにするつもりだった。
こんな忌むべき血を絶つことが僕の望みであったのに、結果僕はこうやって守るものも居るし根絶やしになんかできなかった。
血を残す―――本能なのだろうか。
彼女は言った。
『あなたと生きた証が欲しいの』
カズノリと名付けたのは、恵一と椿紀から一文字ずつとって本当は「一紀」と付けたかったらしい。彼女が言う『生きた証』だ。けれど
きっと彼女の中でも、本能が働いたのだろう。
その名前をやめて発音が同じ『和則』と名付けた。
僕たちは
似た者同士だった。
唯一の救いは
椿紀が産んだ赤ん坊が、双子ではなかったことだ―――



