。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。




俺はバカラのグラスをゆらゆら揺らして、その揺らぎを見つめていると、芳醇な香りが漂ってきた。


「だが、イチに殺し屋を雇う金があるとは思えんがな。出世払いなら頷けるが。


そこまでスネークは気が長いとは思えん」


俺が答えると


「ああ、でも“あれ”は売れると思うぞ?


見るからにうまそうな脚だった♪」


と、タチバナはまたもニヤリと笑ってブランデーを飲む。


「ああ、“あれ”か?あの脚には1臆の保険を掛けている」


と、俺があっさり言うと


げほっ!ごほっ!


タチバナはまたもむせた。


乱暴に口元を手の甲で拭うと


「お前、今日は爆弾投下ばかりだな」と肩を竦める。


「言ったろう?スネークとイチは利害関係が一致しているだけで、恐らく金のやり取りはない。


スネークにとってイチを利用価値があるんだろう、イチのバックに何かとてつもなく大きな陰謀が渦巻いている、と」


「ああ、そうは言ってたが、今日は何だか確証がある言い方だな」とタチバナは興味深そうに目を細める。


「正直、五分五分ってところだ。


言ったろう?


俺は龍崎組に間者(カンジャ:スパイのこと)を飼っている、と。そいつからの情報だ」


俺はグラスをデスクの上に置き、脚を組み替えた。


「なるほど、ね。そのスパイの情報は?信用できるのか」


「信用はできる。


そしてそいつの情報に寄れば、イチのバックに着いているのは、通称


“T”―――



Tとスネークとの間に取り交わされたの契約は、イチの“見張り”らしい。


Tの目的が何なのか分からないが、どうやらTもイチに死なれちゃマズい理由があるらしい」


「ふぅん、理由―――ね。Tはイニシャルなんだろうか」


「分からん。だがTはどうやら女らしい。


さらに、スネークはそのTにUSドルで1,000万ふっかけて『契約内容の更新』を図ったようだ」


「それに対してT側は?」


「大金だ。流石に、即答はできなかったようだ。だがTの『本来の目的』は単にイチの見張りだけじゃない。他に目的があることは確かだ」


「確かに、日本円にして約10臆。流石に渋るよな。


でも逆を言うと、この提案にTが乗れば、それこそTの本来の目的を知れる」


俺たちはほぼ同時に顔を見合わせ、そして同じタイミングでちょっと笑い、ここではじめて勢いのついた乾杯をした。


どうやら考えてるのはこいつも同じことらしい。