。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。



繊細なカットが施されたグラスがすぐに半分程琥珀色に染まった。


俺たちは乾杯の言葉もなく、互いのグラスを合わせて、半分ほど一気に飲んだ。


俺はさっきと同じように座ったままデスクに脚を乗せ、タチバナはさっきキリが座っていた場所に、これまた自分のオフィスかのようにくつろいで、片足を乗せている。


「旨いな」


くっそ、タチバナめ。酒のセンスだけ認めてやる。


「ホントは嫁にプレゼントするつもりだったのに、あいつは俺を置いて会社の飲み会に行くとか言い出して」とタチバナはさめざめ。


「ふーん、てか嫁、働いてンの?


お前と結婚するぐれぇだから金目当てだと思ったが」


「いや、それだけは無い。あいつは俺よりも会社を愛してる」と、タチバナはキッパリ。


こいつより会社を愛してるとか、ちょっと笑えるぜ。


でも…


「へぇ、キャリアウーマン系?」


意外だな……


「いや、常に崖っぷち」


意味分かんねぇ。


「今ん所に不満があるようなら俺の会社で雇ってやってもいいぞ?腰掛けOLでよけりゃ、な」とデスクに肘をついて提案。その嫁ってのが単に気になっただけ。


こいつが溺愛するぐれぇだから、相当な美女に違いない。


酒の趣味も合うが、女の趣味も合うところが厄介なところだ。


思い返せば、高校時代、女を取り合ったこともあったな。としみじみ。


懐かしいぜ……


じゃなくて!消したい!その過去!


俺の人生から消し去りたい!


「女と言えば、さっきすれ違ったぜ、お前んとこの秘書。


んで、鴇田のこれ」と言って小指を立てる。


イマドキやんねぇよ、それ。


「メガネ取ると、さらに美人だな♪」


と、タチバナは嬉しそうだ。


「何だよ、お前のタイプなのか?」と聞くと


「タイプっちゃタイプだけど、苦手と言えば苦手だな」


タチバナは意味深そうに言って含みのある微笑を浮かべる。


「何だよそれ」





「顔は美人でも中身は―――



怖いオンナだろうな、ってこと」





俺は目を細めてグラスに注がれたブランデーを一口。タチバナもデスクに口を付けていた。



「さすが犬並の嗅覚だな。



―――アイツだけは止めておけ。


アイツの本名は




玄蛇 朝霧」




俺の言葉に、ブランデーを口にしていたタチバナが盛大にむせた。