「土産話はないが、土産ならあるぞ」
タチバナはそう言って、ドン!とブランデーのボトルをテーブルに置いた。
「生憎だが俺は仕事中だ。
飲みたいんなら、お前の自慢の嫁と飲め」
と言ってやると、
「生憎だが、その嫁は会社の飲み会で留守にしてる」
と、タチバナはつまらなさそうに、ふん、と鼻息を吐く。
「ああ、そっか。それで寂しくて?」
と俺が指摘すると
「んなワケあるか。誰が好き好んでお前と顔突き合わせて飲みたいと思う。
旨い酒も不味くなる」
「俺も同感だ。お前と顔を突き合わせて飲みたくない」と腕を組むと
「ホントは嘘。
たまにはお前と飲むのもいいかな、って思ってな」
はぁ?
何だよ、急に。気持ち悪っ!
と、急に寒気を覚えて両肩を抱くと
「まーいいから付き合え♪どーせ締日延びてお前も暇だろ?
金と権力にもの言わせて強引に延ばさせたの知ってるんだぜ♪」
と言い、手慣れた仕草でサイドボードの中を勝手に漁ってバカラのロックグラスを二つデスクに置く。
まぁ、当たってるだけに何も言えんが。
「てか、何故お前が締日を延ばしたことを知ってる」と大人しくグラスを受け取る……と言うよりほとんどぶん取る勢いで奪うと
「その手の情報も早いの。“ある意味”同業者みたいなもんだろ?俺たち」
あーそー、なるほど。こいつんち(実家)から回ってきた情報ね。
と、妙な納得をしてグラスを突き出すと、タチバナはちょっと苦笑して、ボトルから琥珀色の液体を注ぎ入れた。



