この会長室は特別な設えにしてある。俺が居るときは特に開錠キーは必要じゃないが、俺が不在なとき、そして万が一の時に備えてセキュリティはしっかりしている。
不在なときは、特定の人物しか持っていないカードキーをスキャンして、さらには指紋と眼球認証も必要だが…
今はそのどれもがオープンな状態だ。つまり円周率野郎が入りこむのは容易いことで…
「何故居る」
と、思わずため息と共に口から出ると
「その台詞、よく嫁に言われるんだよな~、あいつ隙だらけだから、あとを尾けられてるのまるきり気づかないの」
ふふふ、とタチバナは気色悪く笑う。
「てかお前は、嫁のストーカーか」
「ああ、よく言われる。家庭内ストーカーだって」とタチバナは大真面目。
「嫁の姿を隠し撮りした写真を写真集にしたんだが、嫁に1秒で燃やされそうになった。ふ~危なかったぜ」
あ、そ。
てかまたノロケかよ。
てか、お前嫁の写真集とか、何やってんだよ。



