。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。




俺の凄みにもキリは動じることなく、口の端に淡い笑みを浮かべ


「あら怖い♪」


と、全然怖がってない様子で俺の手から逃れると


「安心してください。私は寝返るつもりはありません。


前にも言いましたけれど、そもそも私は“兄”の存在を知らない。


一族の為、と言う義務感も責任も持っていない。


そう言う意味で、私は玄蛇にとって“裏切り者”かもしれませんね」


キリは温度の感じられない冷たい声で淡々と言い


「でも、これだけは言わせて



私はただの女です」



薄く笑った。


“ただの女”がヤクザの脅しをあっさりかわすか。


相変わらず食えない女だ。


「それにご安心ください。私は翔のことを―――……」


と言って、ちょっと首を捻った。


そこ、何故考える?


「愛してる?」


そこ、何故疑問形?


色々突っ込みたかったが


「私の目当てはたった二つ」


二つもあるのかよ。


「翔の顔と、か・ら・だ❤」


憐れ、鴇田。


こんな蛇女の餌食にされて。


今更ながら後悔した。


俺、結婚を止めさせるべきだったか?


「お前と居ると色々吸い取られる」こっちのペースも、脅しも、全く通用しん。


「お前は帰れ、鴇田の元にな。


鴇田が大切にしてる“イっちゃん”の元へ行ってやれ」


しっしと手で指図すると


「お先に失礼しま~す♪♪」


とキリはデスクから飛び上がり、スキップしながら出ていった。


ホント



食えない女―――