「今度こそ悪い冗談は止せ」
不機嫌になった俺を、だがキリは慣れているのか恐れを成すことはない。
「“スネーク”討伐の為に、私が邪魔になったとしても、あなたは私を殺さない。
鴇田の―――
いいえ、翔が大切にしてるから?」
「大切にされてるのか?」逆に聞くと
「ええ、勿論♪」とにっこり笑顔。
「だったら尚更、結婚取りやめを止めろ」
変な日本語だな。まぁ、そんなことはどうでもいい。
「それとも鴇田を利用して、
お前ら兄妹が龍を食い殺すつもりなら―――」
そこで言葉を切って、デスクから脚を退けると、今度は俺が身を乗り出し、キリの細い顎を掴んだ。キリの黒い髪がさらりと俺の手の甲を滑る。
キリは俺の行動に動じることなく、まばたき一つしない。
さすが、世界最強と謳われた殺し屋の妹なだけある。
「その前に俺がお前を捻りつぶす。
俺だけの首が目当てで、翔を利用したのなら―――
奈落の底を見る羽目になるぞ」



