「お前ももう帰れ。鴇田の傍に着いててやれ」とぞんざいに言って手を振ると


キリはちょっと悲しそうに笑って、ゆるゆると首を横に振った。


「イっちゃんは―――きっと私が気に入らないんです。


もう、いっそのこと今回の結婚は見送って――……」


と言いだして


「それは鴇田と相談しろ。相手が違う」


と俺は冷たいと思われるような返答。だが、冷たいと思われようと、こればかりは俺がアドバイスや命令できることじゃない。


キリは俺の意見が不服だったのか、ちょっと苦笑いだけを浮かべて大人しくコーヒーカップの片付けを再開させる。


「まぁー、“俺の”意見としては


“結婚”て好き合ってるもん同士がするわけだろ?例え障害があろうがそれを乗り越えられる二人がするべきだ。


お前たちは、お前たちだけで乗り越えろ。




でも


一つだけ言いたいことがある。


俺は―――お前とヴァージンロードを歩きたい」


と俺が大真面目に言うと、今まで表情を強張らせていたキリが頬を緩め


「ぷっ」


と、吹き出した。


「何だよ、俺は変なこと言ったか?」


「だって……会長が私と?」


「普通は父親が歩くべきだが、お前には父親と呼べる男が居ないだろ?」


再び大真面目に言うと


「失礼ながら、ヴァージンロードを歩いてらっしゃる会長が想像できないです」


む!本当に失礼なヤツだな!