―――傍に居てほしい
なんて、直接的な言葉、響輔の口から初めて聞いた。
いや、今までだってそう言うことはあった。響輔が東京の大学受けるって言って勝手に進路決めたときも、俺がアメリカの高校行く決めたときも。
俺たちは本当は傍に居てほしいのに勝手に「裏切られた」って思ってすれ違って。
でも、小さなすれ違いも今はとても
怖いんだ、と響輔の背中が物語っている。
そう、響輔は怖がっている。
自分がこうと決めた女がいきなり自殺未遂なんてことになったから、どうしたらいいのか分からない、戸惑っているのだろう。
それは至極当たり前の感情だ。
けど、俺が傍に居るとあの女狐の本心を聞きだせない気がして
俺はカーテンで仕切られた向こう側、恐らくベッドがあるであろう場所を目配せ。
「俺はここで待つ」と小声で言い、響輔は頷いた。
響輔がカーテンの向こうに行って、それでも気になった俺はカーテンの隙間からちょっと顔を覗かせてその様子を窺った。
ベッドに横たわった女―――
最後に見たのはいつだったか忘れたが、最後に見たときよりも白く一層小さく見えた。
響輔がゆっくりイチの横たわっているベッドに近づき、
「一結……」
そっとあの女の名前を呼び、点滴の針が刺さっているその白い手をゆっくりと包み込んだ。
「きょ……すけ……来て……くれたの……?」
最後に聞いた言葉が思い出せない程、その声は弱々しく
でも
こいつってこんなに可愛い声だっけ
と思う程、素直な気がした。
響輔を―――こんな風に呼ぶんだな。



