。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。




見知らぬ女は40代半ばだと思われた。涙で顔をぐしゃぐしゃにして肩を小刻みに震わせている。一方の鴇田は顔色が悪いものの、その足取りはしっかりしたものだった。


一瞬緊張が走り


「一結は……」


響輔が立ち上がり、俺もそれに倣った。


その瞬間、女の平手打ちが響輔の頬を直撃した。響輔は避けようと思えれば避けれた筈なのに、それをしなかった。


「あなたのせいよ!!あなたさえ“you”の前に現れなかったら!!


だからあんなに注意したのに!」


“you”と言ったから、この女はイチのマネージャーか何かなのだろうか。


女はヒステリックに叫び


「いきなり何するんだよ!」と俺が響輔を庇う形で前に出て


再度手を振りあげる女の手を、今度は鴇田が後ろから掴み止めた。





「キョウスケ……


イチは、無事命を取り留めた。




心配かけて



済まなかったな」




鴇田の静かな言葉を聞き、響輔が俺の肩を力強く引き、一歩前に出た。


「ほんまですか?」


「ああ。意識も―――戻った。


悪いが、会ってやってもらえるか」


と、小さく頭を下げ、響輔もぎこちなく頷いた。


鴇田は泣きわめく女の肩を抱いて、長椅子に座らせている。


看護師がIDカードをかざし、中に響輔を入れてくれるよう促した。


響輔は大人しく入って行くかと思いきや、少しの間戸惑ったように俺を見てきて


「戒さん……かっこ悪ぅこと頼んでもええですか?」と聞いてきた。


「うん?何や」





「傍に居てほしい」