見知らぬ女は40代半ばだと思われた。涙で顔をぐしゃぐしゃにして肩を小刻みに震わせている。一方の鴇田は顔色が悪いものの、その足取りはしっかりしたものだった。
一瞬緊張が走り
「一結は……」
響輔が立ち上がり、俺もそれに倣った。
その瞬間、女の平手打ちが響輔の頬を直撃した。響輔は避けようと思えれば避けれた筈なのに、それをしなかった。
「あなたのせいよ!!あなたさえ“you”の前に現れなかったら!!
だからあんなに注意したのに!」
“you”と言ったから、この女はイチのマネージャーか何かなのだろうか。
女はヒステリックに叫び
「いきなり何するんだよ!」と俺が響輔を庇う形で前に出て
再度手を振りあげる女の手を、今度は鴇田が後ろから掴み止めた。
「キョウスケ……
イチは、無事命を取り留めた。
心配かけて
済まなかったな」
鴇田の静かな言葉を聞き、響輔が俺の肩を力強く引き、一歩前に出た。
「ほんまですか?」
「ああ。意識も―――戻った。
悪いが、会ってやってもらえるか」
と、小さく頭を下げ、響輔もぎこちなく頷いた。
鴇田は泣きわめく女の肩を抱いて、長椅子に座らせている。
看護師がIDカードをかざし、中に響輔を入れてくれるよう促した。
響輔は大人しく入って行くかと思いきや、少しの間戸惑ったように俺を見てきて
「戒さん……かっこ悪ぅこと頼んでもええですか?」と聞いてきた。
「うん?何や」
「傍に居てほしい」



