響輔の話はその続きがあって
「そんで、鴇田さんと派手に喧嘩してもうて…」
まぁ?響輔が言う『喧嘩』は単なる『口喧嘩』って言うレベルではないだろう。
「まぁ、響ちゃんはキレると怖いからなぁ」
とわざと明るく言うと、響輔はぎこちなく苦笑を浮かべた。
「ほんまに殺意があったわけやあらへんけど、
一結の目ぇには俺が鴇田さんを殺そうとしてる、って映ったんかもしれへん」
「そらそうやろ。お前怒るとマジで怖いもん」
と言うと、響輔は苦笑を浮かべながらぎこちなく頷く。
「鴇田さんが俺に殺される、思うたかもしれへん。
だから……」
「だから自殺未遂した、と?」
そんな単純なもんじゃないだろう。よく考えれば分かることなのに、響輔ってときどき
鈍感。
「それはちゃうんやないか?」
って言うかそんな単純な問題じゃないだろ。
あの女が『響輔と付き合ってたら、鴇田を殺されるかもしれない』なんて思う筈がない。
まぁそこまでよぅ知らへんけど。
「イチの内部は複雑なんやろ。
よくわからんけど、鴇田に対する憎悪と、同時に愛されたいと言う気持ちと―――
そんでお前に惚れてたあの女が、本気でお前が向き合ってくれる―――ってなった。
同時にスネークにも揺らいどる。
行き詰ったんやないかな。
生きる
ってことに―――」
ほんまのところ、分からへんけどな
と最後の言葉は口の中で消えた。
そして響輔もきっと行き詰まった。
朔羅を想うことに―――
同情じゃなく、二人は寂しかったんだ。
けれど相手は誰でもいいわけじゃなく、同じ痛みを別つ二人だからこそ、惹かれ合う何かがあったんだろう。
「ま、処置室やし、“あの”変態ドクターが付いてるから大丈夫やないの?」
と空元気で、響輔の肩を叩くと
「そうですね」
と響輔が力なく笑った。
そのときだった。
処置室の扉が開いて、中から見知らぬ女と、
鴇田が出てきたのは。



