俺の問いかけに朔羅がうっすら目を開ける。
一瞬……前に御園医院で朔羅が変わっちまったことと同じことが起こったのかと思ったが、俺は朔羅に触れていない。当然血液が触れることもなかった。
『君の抗原で―――黄龍が目覚めるように作り直した。
抗原は―――君の何で反応するのかは今の私には分からない』
とりあえずは大丈夫かと思ったが、
『私がいつ彼女に薬を投与するのかは分からない。
それは口から溜飲することも可能だし、気化したものを吸い込んでも威力を発揮する』
と言う言葉を思い出し、万が一スネークが朔羅に薬を飲ませたり嗅がせたりしていたら、
俺は迂闊に朔羅に触れられない。
とりあえず、砕けた鏡の破片で俺自身が怪我をしないよう充分に配慮して、再び朔羅を揺すると
「………戒」
と、朔羅がうつろな目で俺を見上げてきて、どうやら『俺』のことは分かるようだった。
そのことに深いため息がでた。
「どうしたんだよ、何があったんだ!」
と思わず勢い込むと、朔羅は虚ろな目をゆっくりと辺りに彷徨わせている。
「怪我……してる。鏡もぶっ壊れてるし、お前がやったんか……」
と聞くと
「鏡………?」
朔羅は『何の事だ?』と言いたげに、ゆっくりと目をまばたきさせる。
「腕、怪我してるし!何があったんや!」
俺が朔羅の腕を持ち上げると、朔羅は再びまばたきしてゆるゆると首を横に振った。
朔羅がどこまで記憶しているのか俺には分からなかったが、どうやらスネークと何があったのかは覚えていない様子だった。
空白の10分間……
何があったのか問いただしたかったが、これ以上深く聞くのは危険だ。
「何があったんかはまた後で聞くさかい、怪我の手当てが先や。起き上がれるか?」
俺の問いかけに
「……うん」
と、言って朔羅は俺の腕に縋ってきた。
朔羅の腕を支えたが、腕にも足にも力が入らないようで、酷く危なっかしい。
俺は―――
まだ怪我をしていない。どこからも出血していない。
それをしつこいぐらいに確認して、朔羅を抱きかかえた。



