涙が出そうになる。
目がしらが熱くなって喉の奥で嗚咽が漏れそうになる。
けれど、あたしは泣かなかった。
ただ、まっすぐに響輔さんに向き合っていた。
響輔さんがあたしに向き合ってくれたように―――
「朔羅のこと……やっぱ諦められないんですか」
バカなあたし。響輔さんがあたしをフった理由なんて知ってどうするって言うのよ。改善して何とかなるのなら、いくらでもする。
でも―――、それ以外の大事なことが響輔さんの中にあったのなら―――
「ちゃいます」
響輔さんは否定した。
「じゃぁ“you”のことが―――」
言った後、後悔した。
youが響輔さんの中の大切な部分になったのね。
だって響輔さん、“you”の名前を出した瞬間、すごく切ない表情をしたから。
「そ、そうですよね!
美人でスタイルも良くて!しかも女優さんだし!!」
あたし―――凄く意地悪だ。こんなの最後の最後に響輔さんに嫌われちゃうよ。
でも止まらなかった。
「あたしなんて太刀打ちできないや」
無理やり笑った笑顔が引きつるのが分かった。
響輔さんはあたしの言葉に、何も返さなかった。ただ、黙ってコーヒーのストローに口を付けている。
途端にあたしが言ったことがものすごく悪いことだと恥じ入った。
「―――すみませ……」
慌てて謝ったけれど、その言葉を再び響輔さんが重ねてきた。
「リコさんかて、可愛いし、元気やし、明るいし―――
ほんまは結構タイプやったんやけど。
でも、一結を放っておけへんのです。
リコさんはお嬢や金髪くん、一ノ瀬くんがいるけど、一結には
誰もおらへん」
―――だから―――?
「頼られた、わけやあらへんけど、でも」
―――あたしが一人じゃないから―――?
「俺が傍についててやりたい、てはじめて思うたんです」
―――そんなの理由になってないよ―――
―――そんなの本当の“恋”じゃない―――
―――偽物じゃない―――
色々な黒い感情が流れてきて、あたしの脳内を真っ黒に染め上げる。
でもその考えてるどの言葉もあたしの口から発せられることはなかった。
最後の最後、あたしは響輔さんに嫌われることを恐れていた。
バカなあたし。もう完全にフラれちゃってるから、今更体裁繕ったってしょうがないのに。
だけど
―――あんなに強く想っていた朔羅のこと、諦めるぐらい“you”のこと―――
あたしは
勝てなかった。



