少しの間、響輔さんは
「宿題進んでますか?」とか「夏休みだからどこか出かけましたか?」とか当たり障りのない会話を繰り出していた。
その問いに、「はい」や「いいえ」でしか答えられない。
いつもの逆だ。
いつもあたしが色々質問したり話振ったりして、それに関して「はい」と「いいえ」で答えてくれる響輔さん。
何だか嫌な予感ってのが払拭できず、つい
「今日は―――……いつになく良く喋りますね」
と思わず口に出たあと、はっとなって口を噤んだ。
響輔さんはキマヅそうに窓の方へ視線を映し、
ちょっとした間ができた。嫌な沈黙が降りてきて
「しゅ、宿題はもうほとんど片付けました。あとは読書感想文だけです。
千里に宿題写させてって言われたけど、その本人遅刻してくるし。
もー、どんだけよって話ですよね!
最後に残っちゃった読書感想文、読む本がなかなか見つからなくて、響輔さんオススメの本とかあります?」
沈黙を隠すように早口にまくし立てた。
そのマシンガンのような会話をじっと聞きながら、響輔さんはあたしを真正面から捉えている。
「あとは……夏の想い出みたいな、そうゆう作文的なものもあって……」
響輔さんに見つめられて、声がどんどん尻すぼみになっていく。
「きょ、響輔さんと行った花火大会の……想い出を書こうかと……」と俯きながら言うと
「鼻緒摩れして歩くのが大変だったとか、書けそうですね」
響輔さんが静かに言い放った。
「……はい。でもあたし……もっともっと響輔さんと夏の想い出を…」と言いかけたところで
「ごめんなさい」
響輔さんの言葉でかき消された。



