どうする……
どうすればいい!?
短い間に考えて、はっと思い浮かんだ。
あたしは一番近くの壁……鏡を拳で割った。さっき肘で割ったときと同じように、パラパラと鏡の破片が落ちてキラキラ輝きながら床に落ちる。
鏡に写しだされた男の影も同じように床に落ちた。
男が何か仕掛けてくる前に、この鏡の迷路をぶっ壊してやればいい。
そうすれば実体が現れる。そうなったときが勝負のときだ。
「考えは良い線いってたけど、残念だったね」
ふいに背後で……本当にすぐ近くで声が聞こえて、恐らくそれは反響した声ではなく、肉声。
振り向くのが一瞬遅かった。
男の腕があたしの首を捉える。
細いと思った腕は適度に筋肉がついていて、あたしの首を容赦なく絞める。
苦しくて息ができない。
このまま男が首を絞め続ければ、あたしは
死ぬだろう。
だが、簡単にやられてられねんだよ!
あたしは首を絞められたままの格好で、下半身の力をいっぱいに出して、近くの壁に蹴り上がった。
「何!?」
男が、ここに来てようやく狼狽を見せた。
首を絞める腕が緩まる。
まるで階段を駆け上がるように壁の引力を使って、腰を捻りながら飛び上がると、男の腕から完全にあたしの首から逃れられた。
一瞬の隙を与えるわけにはいかない。
まばたきすらせずに、両脚で着地すると床に手を突き、上半身をバネに男の脇腹に蹴りを埋める。
今度こそ手ごたえはあった。
「……っ!」男は脇腹を押さえながら、膝を折る。
あたしは鏡を二面割ったことになる。そのおかげで、どこにホンモノのハジキがあるのか見分けることができた。
それを拾うと、あたしはまだ膝を床についてあたしを見上げている男の頭の真ん中に突きたてた。
ハジキなんてまともに持ったことがない。
いや、二度程あるが、そのどれもが一瞬だったし、このハジキの造りが分からないから撃ち方も分からない。
戒ならすぐ分かるだろうが。
でも戒は―――
来ない。
「形勢逆転だな。あたしの質問に答えてもらおうか」
荒く息をついた両肩を宥めるように、ことさらゆっくり言うと
「質問?」あたしとは真逆で息一つ乱していない男が、サングラスの向こう側で目を上げた気配がした。
「ああ、何であたしを狙うのか―――」



