中は当然ながら一面に鏡が張られていて、迷路みたいになっている。一応人一人が通れる道があるだけだ。


『みたい』じゃなく、迷路そのもだ。


しかも鏡と鏡が合わさって、所謂合わせ鏡って言うのかな……鏡の中に映りこんだ鏡が無限に広がっている。


照明は薄暗いが、鏡の反射で足元にかろうじて光が当たってる状態。


何だか怖い。


戒は『待ってろ』と言ったけど、どこで待ちゃぁいいんだよ。


戒は10分後にしか、ここに入って来れない。


とりあえず前に進まずここで待ってよっか。


あたしはその場で佇んで、ただただ腕時計と睨めっこ。


10分と言ったが、普段ならあっという間なのに、このときばかりはとても長く感じられた。


5分が経ったところで、「引き戻そうかな」と考えはじめた。


こうゆう所って確か「リタイア」できる所がある筈。


入ってきた入口の方を見ると、入口は―――





消えていた。





いや、実際消えたことはない。ただ、鏡のせいでどこが入口か分からないだけだ。


出口に向かって進むことも考えたが、戒があたしを探すかもしれないし。


やっぱ待ってよ。


7分が経過した。あと3分。秒針が動く度、あたしの不安が少しずつ薄らいでくる。


とうとう1分を切ったところで、鏡の中で黒いものがさっと移動するのが見えた。


戒―――!?思ったより早かったな!


と安堵したが、黒い影はあたしに近づくことなく、またもさっと鏡の中を横切る。


戒―――





じゃない!