。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。




え゛!!!


雨!?


降水確率0%の筈じゃ!?


空を見上げると、どんよりと重たそうな雨雲はまるで空から押しだそうとするかのように、地上に近づいてる。


次第に強まる雨。


パーク内に居た客たちも、まさか雨が降ってくると思わなかったのだろう、みんな走ってそれぞれ屋根がある場所まで避難。


「結構降ってくるな。でもどこもいっぱいだ」


戒が言う通り急な雨で、雨宿りできる屋根つきのアトラクションは人で溢れかえっている。


あたしたちもどっか雨宿りできるとこ……


と、探していると


『MIRACLEミラーハウス、こちらです→』と掲げられた看板が目につき、矢印の方を見るとメイン通りから細い脇道が伸びていて


「戒!こっちに雨宿りできるとこあるかも」


と戒の手を引いた。


看板に書かれた小路を辿って行くと、カラフルなMIRACLEランドのアトラクションとはちょっと異色の灰色の建物が見えた。


灰色の雨の景色の中、その建物は暗さを増長させるようにどんよりと不気味だったが、客が並ぶための屋根もある。


不思議なことに、その屋根の下は誰も並んで居なかった。


でも、とりあえずは雨宿りだ!


戒の手を引いて、屋根の下に逃げ込むと、戒は肩に掛かった雨粒を払いながら


「おかしいなー、マップにはこんなアトラクション無かった気がするんだが」


と言い、


「え、そんな筈ないじゃん。だって現にこうしてあるし。


ほら!あそこにスタッフみたいな人も居るよ!」


とあたしは指さし。


ミラーハウスの入口と思われる場所に、黒いフードとマントを被った人物が手招きしていた。


「ホントだ」と戒が目を細める。


スタッフのまるで死神みてぇな衣装に怯んだが


ミラーハウスだし??演出だよな。


と思いながら


「ついでだから入ってくか?せっかく来たし」と戒がその手招きしているスタッフの方へ歩き出した。


「え゛!入るんかよ!」


慌てて戒の後ろを追うと


「だってここ激空きだぜ?ま、あんま人気ないかもしれないけど、意外に面白いかもしれないし」


ま、まぁ??確かに戒の言うことは一理ある。


あたしたちは二人でそのミラーハウスの入口に向かった。