パレードはその場でずっと留まっているわけじゃない。
移動しながらのダンスは流石に素人のあたしたちには無理で、あたしたちは自然にフェードアウト。
戒に手を引かれてダンスの群から離れると、テンポの早いパレードのダンスチームはすでに前方に進んでいて、それを追いかけるように人の群れも移動していっている。
「何か……楽しかったな!」
あたしが言うと
「そう言ってもらえて良かった。何か、強引だったからさー」
「お前が強引なのは今にはじまったことじゃねぇだろ」
と言い合いしてると
「お似合いでしたよ、お二人さま」とスタッフと思われる人がにこにこ顔で声をかけてきて、その首には高そうなカメラがぶら下がっていた。
「どうです?さっきのダンスの記念に一枚」
と言って見せられたのは、あたしたちがワルツダンスを踊っているときの写真。
ちょうどあたしが戒に抱きあげられる瞬間で、あたしはあの時びっくりしたけどその写真は二人が微笑み合って顔を合わせていた。
きっと何枚も連写して、究極の一枚を選んだに違いない。
「一枚1,000円ですが」
と、にこにこのスタッフ兄ちゃん。あんた、その笑顔の下どす黒いもの隠してるな。
でも
この写真、本当にきれいに自然な姿で撮られてる。
……ちょっと、欲しいかも。
だって戒と2ショットあんまり撮ってないし、自撮りだからあんまきれいに映ってないし。
でも、欲しいとか言ったらナルシストだと思われそうだ。
「いや、いいで……」“す”と断ろうとしたところ
「ええ商売やな、兄ちゃん儲かりまっか?」と戒はにやり。
ノリの良いお兄さん
「ボチボチでんなぁ」と受け答えしてるし。
「よっしゃ!気に入ったで♪買うたるわ」
と財布を取り出す。
「え゛!」
とびっくりしてると
「ええやん、記念に一枚。朔羅、めちゃきれいに映っとるで」
「そうですよ~、なかなかいいショットだから、勿体ないですよ」
結局、ノリのいい兄ちゃんに根負け。
戒が買うことになったけど。
戒はきれいに撮れた写真にご満悦。
まぁ、あたしも、ホントは欲しかったから、きれいな写真GETできて良かった……
と思ってたら、手元にあった写真にポツリ…と水滴が落ち、
「何だぁ?」と顔を上げると、どんよりと重い灰色の雲間から雨の雫が落ちてきた。



