響輔さんとは唇にキスしたことがあるけど、あれはあたしからだったし、
男の人からってのはホントにはじめて。
何かすっごく……心臓が爆発するかのように鼓動が煩い。
それでも進藤先輩は何とも思ってないのか、
「行こう。あいつらが追ってきたら今度こそ言い訳できねぇ」
と言ってきて、あたしは心臓の音をごまかすためにぶんぶん頷いた。
進藤先輩がヤクザの家(かもしれない)だと言った場所を離れると、すぐに賑やかな大通りに出て、
「戒の兄貴ならあの家が何なのか知ってるのかも」と言い出し
「あ、じゃぁあたし朔羅にも聞いてみますね」
と二人して電話を掛けたけれど
「戒の兄貴、電源入ってない」
「こっちも」
あたしたちは顔を見合わせた。
何か事件に巻き込まれてるのかも!とか一瞬過ったけれど
「二人で映画館デートでもしてるのかな」と進藤先輩が能天気……と言うか楽天的??な発言をして、でも行動力はあるんだよね
「響輔の兄貴にも掛けてみる」
と言い、で……電話ぐらいなら大丈夫だよね。あたしが話すわけじゃないし。
顔見るわけじゃないし。
とちょっとドキドキしてると
響輔さんには電話が繋がったのか
「あ!響輔の兄貴!俺です、進藤です!」と、電話をしながらぺこぺこ。
さっき、一瞬、ほんの一瞬だよ?ちょっとかっこいいと思ったけど、やっぱかっこよくないわ、この人。