鴇田が言う21年前と言うのは、あたしが生まれる前のことだ。
あたしは鴇田とママがどうして別れたのか詳しくは知らない。ママは教えてくれなかった。
ただ
『結ばれてはいけない二人だったの』
と。ママはその言葉を言うとき、とても悲しそうだった。
小さい頃は意味が分からず、ママを悲しくさせてはいけないと思って、それ以上それに対して突っ込まず、けれど大きくなっていくと次第にそれが「不倫関係」にあったのだろう、と勝手に思いこむようになった。
だってそれ以外に考えられないじゃない。
けれど鴇田には既婚歴はなかったのを知って、少しばかり驚いた。
では、何故二人は別れなければならなかったのか―――
鴇田にとってママは単なる遊び相手だと考えたこともあったけれど、それも何だか違う気がする。
「21年前―――」
鴇田はグラスを手のひらの中で弄びながら、ぽつりと語り出した。
「ちょうど―――……そうだな、お前たちの、さっきみたいな別れのように
俺はさゆりと別れさせられた。
青龍と朱雀、元々相容れない組織の人間同士が恋に落ちた、なんてバカバカしい話だが
確かに俺たちは愛し合っていた」
愛し―――合ってた………?
はじめて聞くその話に、あたしは涙で頬に張りついた髪を避けながら鴇田を眺めた。
鴇田はこちらを見ていなかった。
「バカバカしいかもしれんけどな。駆け落ちも考えた」
鴇田は顔を片手で覆い、もう一方の手でグラスを握っている。
「だが俺の親父にバレて、半ば強引に龍崎組の守役へ追いやった。
先代のさらに先代、先々代はご老体だったが、威厳がありその力は強大だった。
俺はまるで籠の中の鳥だ。羽をもがれて飛べない。
飛べなくなったのは、恋をしてはいけない女を愛してしまったから、その代償に
俺は翼を失った」
知らなかった……
鴇田は―――そこまでママのことを愛してくれてたなんて―――
「血―――なんだろうか。
俺とお前、恋をしてはいけない相手を愛するというところ」



