。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。



ドっ


鈍い音が聞こえて、あたしはそろりと顔を戻すと、


辺りは軽やかな白い羽根がたくさん舞っていて、その白い景色に一瞬戸惑った。


何が起こったのか少しの間分からなかった。


振り下ろされた筈のバーはベッドに仰向けになり腕を広げていた鴇田の脇の下、スーツを貫いていて、その下にある羽毛布団も貫いたようだ。


はぁはぁ


響輔も、鴇田も、二人とも荒い息遣いで、勝負はあっただろうにまだ対峙したままだった。


「俺の頭に風穴が開くより、あんたの、たっかいスーツに先に穴が開いたな」


「クソガキが……お前に何が分かる。知ったような口利くんじゃねぇ!」鴇田は悪態をつき、


「スーツ一枚で済んで良かったやん」


「きょ、響輔……」あたしは這うようにベッドに上がろうとすると、響輔はどこか冷めた視線で鴇田を睨み下ろして、バーを乱暴に放り投げると、ベッドを降り立った。


その横顔や腕なんかに細かい切り傷が出来ていて、赤い血が滲み出ている。


響輔は額を切ったであろう、血の線が走った場所を乱暴に手で拭い、あたしの脇をすり抜けて


「言いたい事はそれだけや。ほな」と、あたしの肩を軽くぽんぽんと二回叩いて、出て行こうとする。


「きょ……すけ」


あたしは響輔を追いかけようとしたけれど、いつの間にか鴇田が起き上がっていて、あたしの腕を乱暴に取ると


「……追いかけるな」と小さく呻いた。


それでもあたしは無言で立ち去ろうとする響輔の背中をふらつく足取りで追い、響輔が鴇田の部屋から出て行って、


パタン


と扉が閉じても、鴇田の制止を振り切り、その扉を強引にあたしが開き、


「イチ!中に入れ!」と言う鴇田の怒声の中、あたしの…振り乱した髪の隙間から


エレベーターホールで、ちょうどエレベーターが来たのであろう、中に入り込んだ響輔と目があった。


「イチ!追うな!」と鴇田に強引に連れ戻されそうになったとき


扉が閉まる瞬間、響輔の口が静かに動いた。ちょっと悲しそうな、それでいて苦しそうな……複雑な微笑で






「俺はなんぼでも


一結が望む言葉、言うたる」





扉は


閉まった。