とにかく、一刻でも早くこの場を離れなきゃ!
本能的にそう感じて、歩き出したものの戒がどのスタッフに聞きに行ったのか分からず、そうこうしている内に広場に人が集まり始めてきた。
パレードの時間が迫ってきているのだろう。
戒―――
―――どこ―――?
視界に映る人の波がぐにゃりと歪んで、ぐるぐる渦を描く。
こんなこと、前にもあった。確か……そうだ、千里のおばちゃんと叔父貴が不倫してるかも、って勘違いして後を尾けていったときだった。
あのときよりカラフルな色合いがまるでくるくる捩じったキャンディーみたい。
あ……ダメだ……
眩暈みたいなものを感じてふわりと体が後ろに落ちる。
「……ら、朔羅!」
後ろから抱き止められて、あたしは、はっとした。
あたしを抱き止めていたのは言うまでもなく戒で、
「大丈夫かよ!」
と戒は至極真剣な顔付きであたしを覗きこんでいて、
「……か、戒を探そうと……でも、大丈夫…ちょっと…貧血?みたいな」
「……そうか。でもさっきあの木陰のベンチで待ってろって言ったろ?俺はぜってぇ戻ってくるから」
絶対
戒は戻ってくる
今までだってそうだった
あたしから離れても、離れても離れても―――
絶対あたしを探しだしてくれた
ちらりとベンチを見た。
そこに、もうカズノリくんとお母さんは居なくて、きっとどこかに移動していったのだろう、
何故だか凄く安心した。