どこかで聞いた名前だと思う前に、それがすぐにごく最近聞いた名前だと気づいた。
タイガの――――
子供の
女の人はジーンズと男の子……カズノリくんと同じボーダーシャツ姿で慌てて走り寄ってきて
「もぉ!ママの近くを離れないでって言ったでしょう!」と怒る。
確か……カズノリくんの母親は『イヨハラ ツバキ』って名前だったような……年齢も40そこそこだった気がするけど、このお母さん三十代前半っぽいし、前にちらりと見た『イヨハラ ツバキ』の顔とは違う気がする。
それに、タイガの(?)カズノリくんは計算からするとあたしたちぐらいの年齢だ。だけどその計算も確かなものではないけどな。
つまりこの子の名前は偶然カズノリくんだったってことか。
「もう、カズくん勝手にどっかいっちゃだめよ」と母親に叱られて(?)しゅんと頷くカズノリくん。
「あ、あの……この子あたしの心配してくれてて」
と慌てて話に入ると、女の人は顏を上げ最初は不審そうにしてたものの、ただの女子高生だと気づくと
「そうなの?ごめんなさいね。息子が迷惑かけたみたいで」
「い……いえ、楽しかったです!ね、カズノリくん」
とカズノリくんに意見を仰ぐと
「うん♪あのねー、おねえちゃんぐあいわるいんだって」
と親切にも母親に説明してくれる。
「そうなの?医務室に行った方が…」と女の人の言葉を遮って
「だ、大丈夫です!ちょっと休んだらだいぶ楽になったって言うか」と立ち上がり
「そお?」と女の人は尚も心配そうにしている。
「カズノリくん、ママ見つかって良かったね。じゃぁあたしは」と言って手を振り慌ててその場を離れた。
背後で「バイバイ」カズノリくんも手を振り返してくれたけれど、あたしは振り向けなかった。
頭が―――
イ タ イ
『きれいごと抜かしてるんじゃねぇ!!
相手を誰だと思ってやがる!
世界一の殺し屋だ!一歩でも何かが違ったら、俺たち全員が死ぬ羽目になるんだよ!』
『きれいごと以前の問題だろ!
タイガのガキには罪がねぇんだよ!
関係ないその子に一生消えない恐怖を植え付けるってのかよ!』
以前、戒とあたしはそう怒鳴り合って喧嘩した言葉が脳の一番痛いところでガンガン騒いでいた。



