。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。



だけどその笑いは長くは続かなかった。


あたしは底が見えたグラスの中に溜まった氷の残骸をストローで意味もなくかき混ぜながら


「あたし、その後、酷いこと言っちゃったんです」


「酷いこと?」先輩が目をまばたく。


「響輔さんは、残酷だよ。って」


あたしの言葉に先輩はしばらくの間腕組をして「う~ん」と唸っていたけれど、やがて何か答えが見つかったのか、ぱっと顔を上げた。


「俺、よく女たちに『クズ』だの『サイテー』だの言われたことあるけどさー、『ザンコク』ってのは言われたことなかったワ」


あそ……


やっぱこの人に相談すべきじゃなかったわ、あたし。


「でもそれもちょっと違うな、って思う。『ざんこく』って言う言葉はさ、思いやりがなくて平気で人を苦しめる人のこと言うんだろ?だからリコちゃんの発言は間違ってるよ」


言われてあたしが目をまばたくと


「キョウスケの兄貴の肩を持つワケじゃないけど、あの人誰よりも色んな人のこと考えてて、そんでがんじがらめになってんじゃないかなー。


誰に対しても真面目に対処しようとしてるけど、不器用なところがあるからさ」


それ、同じようなこと龍崎くんも言ってた。


龍崎くんが先輩に喋ったのかな?いや、そんなことはしないよなー流石に。龍崎くん、ああ見えてすごく口が堅いし。ましてや人の恋路をぺらぺら喋る人でもない。


そう言う意味で龍崎くんのことも信頼してる。


と……友達だし?


そう考えると、やっぱり進藤先輩は一応“先輩”なだけあって。子供なあたしよりちょっと“大人”な感じだ。


先輩の目には響輔さんがそう映ってるんだ。


この人、ガラ悪いしバカだけど、人を見る目って言うのかな、本質を見る目は備わってる。


先輩の目に


あたしはどう映ってるのだろう―――