。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。



あたしはママ以外の誰かに愛されたことなんてなかった。


もちろん誰かに『愛してる』なんて言われたこともない。


だから戸惑った。


こんなあたしを玄蛇は




愛してる





と言ってくれた。


かといってあたしは玄蛇の気持ちに応えらないし、するつもりもないけど。


でも


あたしを見つめる目はすごく切なくて、優しかった。そしてヤツは心の中で―――あの日あの夜降りしきる雨のように


泣いていた。


決して手に入らない、そう気づいているに違いない。


それはあたしが響輔に抱く気持ちだから、あの瞬間気持ちが



共鳴した。





「あの写真がまだ残っとったら、分析しよ思うんやけど、持っとる?」


「う、ううん!全部マネージャーが持っていったわ。片もついたし、もう大丈夫よ!」


これも嘘。ほとんどをあたしが持ち帰り、さらにその数枚を玄蛇に投げつけてやって、あたしの手元に残ったのはたったの一枚。


「てか、分析なんてそんなに簡単にできるものなの?」


「あんま使いたないけどな、PCで分析は可能やよ。ついでにその情報をSNSなんかで流したソースのIPアドレスも辿れる」


言ってること、全然分かんないけど、とにかく響輔には犯人が見つけられるってことよね。


「因みにソースってお好み(焼き)に掛けるのとちゃうで」


「知ってるわよ、そんなこと。情報元ってことでしょ。バカにしないでよ」


と言っても最近知ったことだけど。響輔がPCおたくだってことを知ってちょっと勉強したんだ。


「そら良かった。ところでお好み(焼き)はどっち派?大阪?広島?」


と聞かれて、話が逸れたことにちょっとほっ。いつもならこいつのわけのわからないペースに『何なのよ!もう』って思ってたところだけど。


あたしはお好み焼きと言えば


「広島」即答。


だって元を辿ればあたしだって朱雀の人間だし、当たり前じゃない。


「てかねぇお好み(焼き)って言ったら広島に決まってるじゃない!」


「はぁ?お好み(焼き)はお好みやん!広島んは“広島焼き”やで!」


「そんな言い方しないわよ!お好み(焼き)は広島!」


「大阪」


「広島!!」


と言い合いしながら、そのくだらない言い合いでも楽しかった。


玄蛇とは―――



くだらない会話はいっぱいしてきたけれど、でも


違う。


心がこう、ふわっとなって、ときどき、きゅっとなって、わくわくする感じなの。


玄蛇とは―――


違う。





「ねぇ、響輔


誰かに




『愛してる』





って言ったことある?」