それでも鴇田がコレクションしてるDVDのラインナップが気になって、あたしも響輔の隣に並んでガラス戸を覗きこむ。
あいつのことだからエロDVDとか無さそうだけど……
もっとタチが悪い。
あたしは額を押さえた。
そのどれもが任侠映画だからだ。
あたしは開きかけていた扉をバンっと閉めて、
「気っ!気を取り直してカードゲームでもやりましょ!トランプぐらいあるでしょ」と、同じ棚の引き出しをごそごそまさぐって居たら
花札
が出てきて、
「何なのアイツわ!!プライベートでもヤクザか!」
「戒さんはプライベートでもエロ丸出しやで。アダルトDVDのコレクションは凄い」
「どっちも問題じゃない!あんたの周りはましなヤツいないの!」
響輔はちょっと考え込んで
「う~ん…」と首を捻って考え込んで、
長考??
もういいよ。つまりマトモな人が居ないってことね、と片付けることにした。
「ねぇ、響輔は……?あんたの好きな映画って無いの?」と聞くと
「俺?俺はまぁ割と何でも見るよ。ただし刑事もんはあんま見ぃへんけどな。どうもデカとかサツとか苦手なんや」
まぁヤクザなあんたが刑事物好きだって言ったらそれはそれで問題だと思うケド。
でも
――――刑事
と聞いて、ドキリ
心臓が大きく跳ねた。
あの“ネズミ”は近くに居ない筈なのにずっと見張られているような感じで、今も尚鼻孔の奥で忘れられない柑橘系の香りがくすぶっている。
思わず両肩を抱きしめると
「どないしたん?寒いんか?エアコン調整……」
言いかけて再び立ち上がろうとした響輔のTシャツの袖を軽く引っ張って
「大丈夫……」と小さく答えた。
響輔は少しの間悩んだ素振りを見せていたけれど、やがてふわりと優しくあたしの手を取ってソファに促すと、さっきと同じように隣合って座り、
その腕があたしの肩を優しく包み込んだ。



