「でも、あんたがまともなデートとか…」
「そらあるわ。高校ん時に付き合ってた女が一人暮らしやったし、いっとき入り浸っとたしな」
「へー……高校のとき…」
言いかけて
「はぁ!?高校生のとき!?それって半同棲ってヤツ!あんた真面目そうな顔してやること派手ね」
「まぁなぁ。でもその女とは三か月程で終わった。他に好きなヤツができてん。
んであっさり」
「捨てられたんだ」
ぷぷぷ、とちょっと笑うと
「俺なんて捨てられ人生やで。大抵の女は『鷹雄くんて何考えてるか分からへん』って、まるでルール本みたいにな。そのコースがお決まり」
まぁ?確かに分かる気がするけど。
でも、『何考えてるか分からない』裏でちゃんと相手のこと考えてくれる。大切に想ってくれる、それを他の女たちが見抜けなかっただけ。
「まぁ半同棲みたいな女とキレた頃、おかんにバレて大目玉くらったり。
踏んだり蹴ったりやったわ」
「何それ(笑)あんたでもお母さんに怒られることあるんだ」
そう言えば、響輔の家族の話聞くの初めてだ。
「うちのおかんは怖いで」
響輔でもお母さんには頭が上がらないのね。ぷくく、とまた笑いを堪えてると
「お……お父さんは何やってる人?」と気になってたこと聞いた。鴇田と同じヤクザには変わりないだろうけど。
「親父?親父は不動産王や」
ふ、不動産王!い、インテリヤクザね。でも、響輔と結婚したら将来あたしはセレブマダムになれるってワケ??
とちょっと想像を巡らせていると
「俺は親父の家業継ぐ気ぃはあらへん」とあたしの考え読まれてる……
リビングのテレビボードのガラス戸からDVDが収まっている棚を眺めている響輔の背中を見て、
でも―――
「半同棲ってことは……その女と…寝たの?」
響輔があたしの言葉に振り返る。
「そら、まぁ……」と言葉を濁す響輔。
“寝た”と言うのは言葉通りじゃなく、つまり……
何かすっごくイヤだ。
と悶々と考えてると、響輔は出し抜けにくるりと振り返って目を開いている。
も、もしかして同棲してた相手と同じことを…?『しない』って言ったのに、考えが変わった?それともあたしの色気に惑わされて??なんて考えてたけれど
「あかん。えらいもん見てもうたわ。
鴇田さんのDVDコレクション、ヤバイで」
何なのよ、もぉ!



