コーヒーを飲みながら、響輔はキリさん用のイチゴのプリンを一口。
「……うま」
とボソっ。
「でしょ!それ高いのよ。毎回すっごく行列が出来てね」と説明をしてると、響輔はスプーンでプリンを掬って、私の口元まで持ってきた。
へ!?
「ん」
と言って、さらにズイと突き出す。
こ、これは『はい、あ~ん』ってヤツ!?
「いらへんのなら俺が食うケド」とすぐにスプーンを引っ込めようとする響輔。
「ちょ!ちょっと!まだいらないなんて言ってないじゃない!
それにプリンは一個しかないんだから、半分こでしょうが!」
声を荒げて強引に響輔の手ごと掴むと、プリンを口に放り込んだ。
ホントはもっとロマンチックにやりたいのに、どうしても素直になれないあたし。
でも、こんなの可愛げないよね。
朔羅だったら……
と、またも嫌な想像が頭を過って
「まぁた変なこと考えとるん?」と響輔が呆れたように軽くデコピンしてくる。
「べ、別にぃ」と強がってみせるも、響輔は何でもお見通し。小さく吐息をつくとソファに深く背をもたれさせ
「あんなぁ、一結は一結、お嬢はお嬢やで。そんなん違う人間なんやから違う反応するわ。
比べるだけ時間の無駄やで」
不愛想にそっけなく言ってプリンのカップに再びスプーンを突っ込む響輔。
「分かってるわよ」
ふん、と鼻息荒く膝の上で頬杖をついていると、
「お嬢のこと、引っ張りださんといて。今日だけは、
忘れたい―――」
え―――……それってどういう意味……
朔羅のこと忘れたいから、あたしの記憶で上塗りしようとしてるの?
それはそれで利用されてるみたいでイヤだけど。
「ん」
と、またもスプーンに乗ったプリンをあたしに近づけてきて
「あ、ありがと……」今度は素直にぱくっと口に含んだ。
口に入れるとそれはふわりと溶けて、優しい甘さが口いっぱいに広がった。
響輔と一緒に居ると、こんな感じ。
甘く、優しく―――
利用―――されててもいいや、なんて思ってしまう。
「機嫌直った?」と響輔がちょっと笑う。
「機嫌悪くなんてないし」と、またも強がっちゃって、それでも響輔はあたしのすぐ隣で笑ってくれる。
こうゆうの、
幸せって言うんだね、ママ。
あたしは本当の意味で「幸せ」を感じてるよ、
ママ



