。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。



コーヒーを飲みながら、響輔はキリさん用のイチゴのプリンを一口。


「……うま」


とボソっ。


「でしょ!それ高いのよ。毎回すっごく行列が出来てね」と説明をしてると、響輔はスプーンでプリンを掬って、私の口元まで持ってきた。


へ!?


「ん」


と言って、さらにズイと突き出す。


こ、これは『はい、あ~ん』ってヤツ!?


「いらへんのなら俺が食うケド」とすぐにスプーンを引っ込めようとする響輔。


「ちょ!ちょっと!まだいらないなんて言ってないじゃない!


それにプリンは一個しかないんだから、半分こでしょうが!」


声を荒げて強引に響輔の手ごと掴むと、プリンを口に放り込んだ。


ホントはもっとロマンチックにやりたいのに、どうしても素直になれないあたし。


でも、こんなの可愛げないよね。


朔羅だったら……


と、またも嫌な想像が頭を過って


「まぁた変なこと考えとるん?」と響輔が呆れたように軽くデコピンしてくる。


「べ、別にぃ」と強がってみせるも、響輔は何でもお見通し。小さく吐息をつくとソファに深く背をもたれさせ


「あんなぁ、一結は一結、お嬢はお嬢やで。そんなん違う人間なんやから違う反応するわ。


比べるだけ時間の無駄やで」


不愛想にそっけなく言ってプリンのカップに再びスプーンを突っ込む響輔。


「分かってるわよ」


ふん、と鼻息荒く膝の上で頬杖をついていると、





「お嬢のこと、引っ張りださんといて。今日だけは、


忘れたい―――」





え―――……それってどういう意味……


朔羅のこと忘れたいから、あたしの記憶で上塗りしようとしてるの?


それはそれで利用されてるみたいでイヤだけど。



「ん」


と、またもスプーンに乗ったプリンをあたしに近づけてきて


「あ、ありがと……」今度は素直にぱくっと口に含んだ。


口に入れるとそれはふわりと溶けて、優しい甘さが口いっぱいに広がった。


響輔と一緒に居ると、こんな感じ。


甘く、優しく―――


利用―――されててもいいや、なんて思ってしまう。


「機嫌直った?」と響輔がちょっと笑う。


「機嫌悪くなんてないし」と、またも強がっちゃって、それでも響輔はあたしのすぐ隣で笑ってくれる。


こうゆうの、


幸せって言うんだね、ママ。



あたしは本当の意味で「幸せ」を感じてるよ、



ママ