。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。



良かった。見知らぬ番号でも非通知でもなくて。


ほっとしたのも束の間。何で?と訝しく思った。響輔は特に気にした様子でもなくマイペースにケータイを開いてメールか何かを打っている様子。あたしの電話相手にそれほど興味がなさそうだ。


何なのよ……違う『男』からの電話なのに、全く興味なし?


「はい」


ぶっきらぼうに出ると、


『イっちゃん!聞いてよ~~!!』


開口一番に大きな声が受話口から漏れ聞こえてきた。


「もう!何なのよ!!あたしは今忙しいの!」


大狼に負けず劣らず大声で返すと、あたしの目の前でケータイをいじっていた響輔がケータイの画面を見せてきた。メモ帳欄に羅列された文字を見てあたしは目をまばたいた。


“タイガさんからやろ?何やて?”


『知らない。分からない』と言う意味で首を横に振ると


“会話、長引かせて”と、またも文字が並ぶ。


何が何だか分からないけど、あたしは会話をスピーカーにして


「何?何の用?」と、いつも通りの返答でむすりと答えた。


『ヒツジちゃんとうさぎちゃん、今日デートだって!!!?しかもMIRACLEランドで!!』


大狼の喚き事にあたしと響輔は顔を見合わせた。


「ヒツジちゃんとうさぎちゃんて何よ。MIRACLEランドって、遊園地の??あんたいつから動物園の園長になったわけ?」


『ヒツジちゃんは虎間 戒くんで~、うさぎちゃんは朔羅ちゃんのことだよぉ』


口を尖らせているのだろうか、妙に間延びした返答に「あんたは女子高生か!」とツッコミたくなったけど、やめた。


「それが何なのよ」


『僕だってヒツジちゃんとうさぎちゃんとデートしたいのに!!』


ああ、そ。


もう、返す言葉もない。