どれぐらいそうやって(一方的に)抱きしめていただろう。響輔はあたしを引きはがすこともせず、抗うこともせず
ただずっとされるがまま、じっとしていた。
そのときだった。
~♪
スマホの着信音が鳴り、あたしは肩を震わせて音の鳴る方へと顔を向けた。
スマホはリビングのローテーブルに置いてある。
図ったようなタイミングで掛かってくる電話の相手は―――
きっと玄蛇に違いない。
どうしよう、どうしよう……!
取るべきか無視するべきか。でもこの場で取らなかったら響輔が不審に思う筈。あたしと玄蛇が繋がってることなんてもう響輔にはお見通しだけど、
ギブアンドテイクで付き合ってるあたしたちだから、ここで無視するのはルール違反だと思うけど
でも―――
鳴り続ける着信音が部屋に響き渡り、どうしていいか身動きができずにいると
響輔はここにきてそっとあたしを引きはがし、急ぐわけでもなくマイペースに音の鳴る方へ向かって行く。
「ちょ……!響輔っ」
慌てて後を追った。
裏返しになったままのスマホを響輔は表を向けて確認する無粋なことはせず、
「ん。電話、なってんで」
と、ごく自然に渡してきた。
玄蛇の名前は登録していない。あいつの番号は三日ごとに変わるし、だからか敢えて『非通知』にもしてこない。ヤツはヤツ独自のルートがあって、その電話は海外のサーバーをいくつも経由してるって言ってたから、特定はできないらしいけど。
でも、受け取ったからには出ないわけには行かない。
覚悟を決めてスマホを表に向けると
“着信:変態大狼”
の、文字が。



