腸が煮えくり返るようなことを平然と言ってのけるこの謎の男に腹が立ったが、怒りよりも先に疑問がきた。


「どこかで会ったことがあります?」


あたしが目を開いて男を見上げると、男はうっすら笑った。男がサングラスを直す。


サングラスの向こう側で目が優しく細まるのを感じた。





「――――何それ。ナンパ?」





うわわ!


「違っっ!!」


慌てて否定をして手をブンブン横に振ると、男はまたもうっすら笑った。


ば、バカにされてる気がする!


この謎な男はあたしをナンパしに来たわけじゃなさそうだし、それだったら(そうじゃなくても)もう用はない。わけわかんないし。


失礼なヤツだし。


正直関わりたくねぇタイプだ。


「ストラップ……探してくれてありがとうございました!じゃぁ」


短く礼を言って立ち去ろうとすると


「またね。カレシと仲良くね」


男はうっすら笑って手を挙げた。その影に自分の記憶が一瞬だけリンクした。


そしてまた男は


「~♪」


かごめの歌を口笛で紡ぎながら、背を向ける。






やっぱり―――……この男見覚えがある。






あたしは男を引き止めた。立ち去ろうとする男の腕を掴み、男が振り返ったところであたしは口を開いた。





「あんた誰?」





誰なんだよ。








     ―う し ろ の 正 面 






          だ    あ    れ