。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。




「ん?」


意味が分からず目を瞬いていると、


「お前ちっこいからな~、人に埋もれちまって分かりづれぇんだよ。


その目立つうさぎ持ってたらすぐに見つけられるだろ?」


にかっと笑ってあたしの手にしっかりとミラビを持たせる戒。


「ち、ちっちゃいだけ余分だ!」と言いつつも、手渡されたミラビはシンプルミラビより確かに目立っている。


「それに!うさぎじゃなくてミラビ!」訂正していると


「どっちでも良くね?」と戒は耳をほじほじ。


うわぁ、面倒くさそう……


「ほら、早く行くぞ」とせっかちに腕を引かれて、


「ちょっ!ちょっと待ってよ!あたしまだ買うって決めたわけじゃ……」


だってこれ、凝った洋服着てるし大きさもそこそこあるから結構値が張るんじゃないか…


ミラビのタグをちらりとめくると、


んゲ!!


¥5,200也~


高っっ!!無理無理っっ!


慌てて棚に戻そうとすると、


「買うのはお前じゃなくてこの、オ・レ♪


お前は財布出さなくていいし。てか、出すなよ」


相変わらず俺様な物言いで、戒はあたしの手からミラビを取り上げひょいと肩に担ぐ。


お、男らしーー!キュン♪じゃなくて!!


はぁ!?


「ちょ、ちょっと待て!


か、戒!いいよ!!これはさすがに!」


だって入園料だって、飲食代だって、細けぇこと言やぁ交通費だって出してもらってるわけだし。


土産代ぐらい自分で払わないと。


レジに並ぼうとしている戒を慌てて追いかけてわたわたと財布を取り出そうとしていると


「財布出すなって言ったばかりだろ」


と、ムっと睨まれる。


こ……怖ぇえよ。


どうしたらいいのか分からず、手に握ったピンク色のお財布をぎゅっと握っていると、


「お前その辺で待ってろ。買ってきてやっから。




てか買わせろ。





てか―――



これぐらいさせてよ。



俺に出来ることってこんなことしかねぇんだよ」




戒はちっちゃなちっちゃな声……まるで囁くような声でぼそりと呟き、その声は周りの喧騒でかき消されることなく


はっきりとあたしの耳に届いた。


届いた――――


けど



あたしは聞こえなかったフリをした。


それに満足したのか戒は小さくウィンクを寄越して自然に人の列に並ぶ。


結局……


最後の最後まで財布を出すタイミングを逃しちまって、


レジに並ぶ人の列から少し離れた場所であたしは財布を鞄の中にそっと仕舞い入れることになった。