……ピンポーン……
何かの音で、のろりと顏を上げる。まだ渇ききってない涙腺から涙の粒を流しながら、その音に耳を傾けると
ピンポーン
今度ははっきりと耳に聞こえた。
インターホンの音だ。慌ててインターホンカメラのモニターまで走って行くと、
ぬっ、とこちらを窺うように
響輔の姿がモニター越しに現れた。
何で―――……タイミング良く……いや…悪いのか?こんな―――泣いてるときに……
恥ずかしいよ。
と思いつつ、そっか……ここの住所メールしたのあたしだ。と考えを改めた。
響輔はこのマンションのエントランスロビーに居るみたいで、オートロック式のキーパッドが設置されている入口まで来れたようだ。
慌てて“応答”ボタンを押し、
「……あ…いらっしゃい……」
『お帰りなさい、あなた~♪』と、新婚ごっこがしたかったあたしは用意していた言葉の一文字も返せなかった。
しかも嗚咽で応答が途切れ途切れになっちゃったし。
ぎこちない挨拶に響輔がモニター越しにちょっと訝しんだ。
だけど次の瞬間うつむき加減に目を伏せて
『部屋、開けて』
ぶっきらぼうに短く言われて、あたしは“開錠”のボタンを押した。



