鴇田が仕事に向かって、五分。その間あたしはずっと考えていた。
何の風の吹き回し?逆に怖いんですけど。
だってあたしの料理が食べたいって言ってるようなものじゃない……
まさかね……
「まさか!あいつは自分で作るのが面倒なだけよ!」
と、理由を付けたけど……考えれば考える程、何だか親子っぽい会話に聞こえて
気恥ずかしさからあたしの頬が熱くなるのが分かった。
「何よ。今さら……19年間ほったらかしだったくせに……
何よ……
今さら親子“ごっこ”みたいなこと。
でも、まぁ?部屋を貸してくれたお礼よ?
ついでに掃除でもしておいてやるか。響輔も来るしね♪」
すぐに考えを改めてあたしはぐるりと広いリビングルームを見渡した。
几帳面な鴇田だけある。あたしがわざわざ掃除なんてしなくても、すでに物は片付いていたし、埃一つ落ちてない。
「何だ、つまんないの」
専属のハウスキーパーでも居るのか、その清潔っぷりはいっそ徹底してると言える。
でも他人を……そう簡単に寄せ付けない……言わばテリトリー意識が極端に強くてちょっと潔癖入ってるあいつが、ハウスキーパーなんて正体の知れない人間を部屋に入れるわけがない。
ってことは自分か……
キッチンのシンクもピカピカだし、食器棚の食器類は種類別にきちんと並べられている。
冷蔵庫の中身は小分けの瓶がいっぱいで、その表面に中身を記載したラベルが張られてた。
「あんたはセレブ主婦か!こうまでされるといっそキモいわ!」思わずそう突っ込んで冷蔵庫をパタンと乱暴に閉める。
ふぅ
我が父親ながら謎だわ。
何もしてないのに何だか疲れちゃって、掃除することも諦め、何か飲み物を飲もうと再び冷蔵庫を開ける。
二度めで気づいた。
冷蔵庫の隅に、まるでひっそりと隠されるように置いてあった淡いピンク色をしたイチゴ味のプリンがあることに―――



