「いいか、イチ。部屋の中の物は触るなよ。位置をずらすな」
「はいはい。分かってるわよ」
几帳面なこいつらしい。数ミリでもずれてたら雷が落ちそうだ。AB型のくせに、面倒なヤツ。
「来客がきても対応するな。敵かもしれんからな」
はいはい。あんたは色々恨み買ってそうだしね…てか、あたしを子供扱いしないでよ!
あんたは母親ヤギかっつうの。
「それと、男を連れ込むなよ」
「はいは~い」
その約束はすぐに破られるわけでけどね♪
「それから……」
くどくど…
鴇田の言いつけは三分ほど続いた。会話を全部録音してテープ起こししたら結構な量になりそうだ。
契約時の約款(やっかん:条約・契約などに定められている個々の条項)みたいに細かいし。
「もー!分かったから、子供じゃないんだし言いつけはちゃんと守るわよ!」
いい加減うんざりしたあたしは鴇田の背を押して、強引に外へ出そう作戦に出た。
鴇田はまだ言い足らないのか、ブツブツと小言を口の中で呟いていたが
「それから……
夕飯作ったのなら、俺の分も残しておいてくれ。
帰ったら食う。
どんなに遅くともな」
「はいはい!分かった……わ……」言いかけてあたしは言葉を詰まらせた。
え――――………?
今、何て――――……
「聞いてンのか?」鴇田に睨み下ろされて、あたしはぐっと詰まりながらも顎を引いた。
こいつの通常だったら、あたしが残しておくって言っても
『毒入りじゃねぇのか。怖くて食えん』とか言うタイプだし。たとえ残しておいても、手をつけずに平気でゴミ箱に捨てる。
そうゆうヤツなのに―――
「ラップかけとく。レンジでチンでいいのなら……」
「充分だ。じゃぁな。仕事、行ってくる」
鴇田は相変わらずの無表情で答えて、アルマーニの靴に足を入れている。
「………行って……らっしゃい……」
パパ



