「戒……どうしたの…?」


恥ずかしさを紛らわせるために聞くと


「俺の我儘聞いてもろてええ?」とちっちゃな声が頭上から降ってきた。


「うん?」


戒が我儘言うなんてめずらしー………


何だろ……






「少しの間……このまま、こうしていたい」






きゅっと頭を抱き寄せられ、髪の中に戒の手が入ってくる。


「いいよ」とは答えなかった。


だってホントはあたしもこうして、抱きしめられたかったから―――


噂話をしていた彼女たちには誰もが羨ましがる理想のカップル―――と言う風に映ったろうか。


でも


本当はこの瞬間ですら、戒にとっては………ううん、二人にとってはとても危険なことで


それでもこのぬくもりを手放すことは




できなかった。




それを知るのはもっともっと





後のこと。