手で顏を覆って俯いていると、
「君ぃ、具合悪いのぉ?」
聞き慣れない間延びした甘ったるい声が聞こえてきて、のろのろと顔を上げるとそこには女子大生と思われる女二人組がさも心配そうに眉を寄せて俺の肩に手を置いていた。
見知らぬ女だった。いかにもイマドキ風の淡い色合いの花柄ワンピースに、茶色い巻き髪。
明らかに年上だと思われるが、結構可愛かった。
「え……いえ……」
何とか笑顔を取り繕って答えると
「でも顔色が悪いわよ。医務室に行った方がいいんじゃない?」と一人が提案。
「そうよ~それともあたしたちが介抱してあげようか♪」ともう一人もにこにこ笑顔で頷く。
何だよ、心配するフリしてナンパか。
「大丈夫です」俺はさっと手を挙げ、丁重に断った……つもりだったが
「大丈夫って顏じゃないわよ」と女たちはふわふわの外見とは裏腹に、結構強引だ。
それとも単なる親切なのか。
どちらか分からず何と断ろうか考えているときだった。
大きな駅の入口から愛しい女―――……
朔羅
が懸命に駆けてきて、きょろきょろと辺りに視線を回している。
朔羅は俺があげたストライプ柄のワンピースとハーフアップにした毛先をふわりと揺らして、
大きな目をゆっくりとまばたきさせながら辺りを見渡している。
どうして俺は―――
こんなに人が溢れているのに、あいつをすぐに見つけることができるのだろう。
どうして―――あいつはあんなに………
輝かしいのだろう。
光っているわけでもないのに、その自然な輝きは男たちの視線を釘づけにする。
男同士の連れ合いは当然、待ち合わせをしているのだろう、女を待っているだろう男も、すでに合流して手を繋ぎ合って居たカップルの男も―――全員朔羅の方を振り返っていく。
「すみません、ツレが来たんで。もう大丈夫です」
口早にそれだけ言って俺は軽く手を挙げると
「朔羅!」
愛しい女の―――この世でたった一人、ただ大切で大切で唯一守らなきゃならない女の名前を呼んだ。



