この世にたった一人………


あいつを守ってあいつを幸せにしてやれるのは―――




俺だけ――――………?




俺が顔を上げると、響輔の切なそうな…苦しそうな無理やり浮かべた笑顔が目に入った。


「悔しいですけどね…


お嬢を悲しませるのも、お嬢を笑顔にできるのも―――あなたしかいないんです」


響輔の俺の腕を掴んでいた手がゆっくりと離れる。


代わりに俺の手に小さなシルバー製のペンダントトップを握らせて、響輔はうっすらと涼しく笑った。


「アクセとか柄にもないですけど、これ―――


GPSです。俺と戒さんの―――


何かあったら互いの位置をこれで確認しましょう。ケータイに位置情報を送っておきました」


何かあったら―――……?


俺は手のひらのペンダントトップを改めて見下ろして、それをぎゅっと握った。


「一結とは新宿でショッピングして、その後映画を見て、夕食を食べてくる予定です」


響輔の説明に、俺はぎこちなく笑顔を浮かべるのが精一杯。


「何や、お前……ちゃんと計画立ててるやんか……さっきは無計画みたいなこと言うてたのに。


しかも普通の女が喜びそうなコースやし」


“あの”女狐イチが並のデートコースではしゃぐ姿とか、想像できねぇけど。






「普通の女―――で居てほしいんです、一結には」








響輔が浮かべていたのはぎこちない笑顔やなく、今度こそほんまもんの



笑顔に見えた。