男はあたしの手を強引に引くと
「ちょっと来てもらおうか」
と言って事務所の裏手へと目配せ。
ここなら大声出したら警備員さんが駆けつけてくれる。
「ちょっと…!ヤダ!!」
あたしが手を振り払おうとして大声で叫ぶと、
「うるっせぇ!黙ってなきゃ痛い目遭わせるぞ!」
低い声で怒鳴られあたしは震えあがった。
「あんた卑怯な手ぇ使ってルミから役を奪ったそうだな!」
そう言われて、目を開いた。
こいつら―――あのアイドルの……
一瞬色んな関係が頭に浮かんだけれど、そんなこと今はどうだっていい。
とにかく、連れて行かれたら酷い目に遭わされるに違いない。
でも叫んだら―――ナイフを突きつけられている以上、これ以上下手な動きはとれない。
誰か……
パパ
玄蛇
「響輔っっ!!!」
力いっぱい叫ぶと同時だった。
「俺のこと呼んだ?」
覚えのある柔らかな関西弁。
頭上から声が降ってきて、あたしは涙目になった目を上げると、停車されていた車の屋根にポケットに手を突っ込んでしゃがみ込み、こちらを眺めていた響輔とばっちり目があった。
響輔―――……



