柔らかな関西弁は耳に心地よくこだました。
思えばはじめてだったのかもしれない。響輔さんが故郷の方言で喋ってくれたのは―――
you……だと思うけど、花火大会の夜……あのときは誰だかわかんない女の人相手に関西弁で受け答えしてた。
あたしは響輔さんの一歩でも内側に入ったと思っていいのかな。
ううん、あたしが―――
入らなきゃいけないんだ。
あたしが行動しないと―――
「響輔さん……今日はありがとうございました。
あたし男の人と喧嘩したの初めてです」
あたしの言葉に響輔さんはキョトン。
すぐにはっとなって慌てて言葉を選ぶ。
喧嘩したのに”ありがとうございます”じゃないだろう。
「違くて!送ってくれてありがとうございました」
慌てて言うと響輔さんは納得したように目を細めた。
「いや……これぐらい……」
「喧嘩したのもはじめてだし、その後仲直りしたのも初めて……」
「はい。そうですね」
「バイクも初めてで、男の人の腰に巻きつくのも……
全部はじめてでした」
響輔さんはすぐに「はい」と返事をしなかった。
響輔さんの返事を待たずしてあたしは畳みかけるかのように口を開く。
響輔さんの内側に―――少しでも入りたいの。
「あたしは―――これからたくさんの”はじめて”を響輔さんと体験したい。
響輔さんじゃないとイヤ。……です」



