「何これ。終わっちゃったじゃん!」とエリナが目を吊り上げる。
「だ……だってぇ何て打てばいいのか分かんないもん」
「会話を繋げるのは疑問形で返すのが法則だよ。これじゃ次に繋がらないじゃん」
……ごもっともです。
これじゃただでさえ筆まめじゃない響輔さんじゃなくても、返答に困って終わっちゃうよ。
てかエリナ……あんたは恋愛の女神か!
でも想像に反して次のメールはすぐに来た。
史上最速??
From:響輔さん
Sub:Re:Re:
>> 俺、リコさんを怒らせてばっかりですね。すみません
たった一行のメールにあたしはまたも目をまばたいた。
響輔さん―――……
あたしはカーテンを少しだけめくってそっと窓の外を伺った。
そこには変わらずこちらを見上げる響輔さんの姿があって、チクリ……胸が痛んだ。
好きな人とこんなに至近距離に居るのに――――あたしたちは言葉を交わすことなく、壁を隔てている。
あたしの王子様は―――ラプンシェルを救い出す王子様のように壁をよじ登ってきたりはしない。
「いい加減意地を張るのやめたら?」
エリナにも言われて、「そうかも……」と思い始めた。
そのときだった。
ヴーヴー……
またもメールが着信を報せて慌ててメールを開くと、いつまでも出てこない意固地なあたしに焦れたのか
From:響輔さん
Sub:
>> どうしたら出てきてくれますか?踊ったらいいですか?
と、メールが来てそれを覗き込んだあたしとエリナは二人して「「プッ」」と吹き出した。
ラプンシェル……どころかこれじゃ天岩戸だよ。



