戒はガシガシと乱暴に頭を拭きながらあたしが居るベッドまで歩いてくると、


ギシッ


予告もなしにあたしのベッドに腰掛けた。


「お、おはよー……」


と、間抜けな返事を返してちまって


でもそれ以外なんて言えばいいんか分かんねえし。


とりあえず手なんて挙げてみると


戒は頬を緩めて目じりを下げ、にっこり柔らかい笑顔であたしの頭をぽんぽん。


「具合どう?どこか痛いところは?」


と、聞かれてあたしはゆるゆると首を横に振った。


「大丈夫、痛いところはない」


な意味だった。


「そっか。なら良かった」


戒は短く言って、心底安心したようにさらに頬を緩めて


突然に




ぎゅっ




あたしを抱きしめてきた。



強く、強く―――



無言でただ強く抱きしめられる。


目を閉じるとすべての五感が研ぎ澄まされて嗅覚の一つに集中する。




戒の香り―――



戒の柔軟剤と……ミントの香りに混じって今はシトラス系のシャンプーの香り。


ただそれだけなのに――――


その心地よい香りに包まれて、あたしはこの上ない幸せを




感じていた。