今、大阪の対馬兄妹に連絡を取るのは危険だ―――
と分かっていた。
親父たちだってあんなに警戒してたぐれぇだしな。
けれど危険だと分かっていても―――、一刻でも早く抗血清を用意しなければ―――
俺はベッドに横たわる朔羅の寝顔を見つめ、意を決するとタブレットと向かい合った。
タブレットの黒い画面には意味も分からない数字や英語の羅列が横に並んでいた。
「無線を暗号化してます。
今から暗号を解きます。俺が合図したら話してください」
響輔は開いたノートPCに向かいキーボードに指を滑らせ、それに呼応するようにタブレットの数字と英語の羅列が次々に消えていく。
「暗号解読まであと10秒。
………3、2.1」
「どうぞ」
「よーぉ、久しぶりやな。兄妹のどっちと繋がってるのか分からんけど、挨拶は抜きや」
俺はイヤホンマイクを直して相手の言葉に耳を傾けた。
『心の方や。あんたから連絡が来るなんて珍しいわね。
戒―――
緊急事態のようね』
砂嵐のような雑音に混じって女にしては少し低めの落ち着いた声が聞こえてきた。
対馬 心(Kokoro Tushima)
妹の方か―――



