しかし大阪の暴れ馬を捕まえるのは一苦労ものだ。
文字通り、あいつらは暴れ馬のごとくどこかに疾走する癖がある。
「彼らを捕まえるのは至難の業ですよ。
ケータイすら繋がらない連中ですからね」
響輔は自室から持ってきたノートPCを立ち上げ、イヤホンマイクを耳に装着しながら呆れたように目を細める。
朔羅の部屋の小さなテーブルの上は急に物々しいサーバールームへと変わったように思えた。
響輔はベッドの上に横たわった朔羅の姿を眺めると、その目をゆっくりと緩める。
朔羅を一刻も早く何とか治したいのは響輔も同じだ。
そのためには手段を選んでられない、ってのが正直な意見だな。
俺は朔羅の肩に布団を掛けると、彼女の額に掛かった前髪をそっと掬った。
エアコンを切った部屋は暑いのだろうか、朔羅の額にはうっすら汗が浮かんでいる。
その汗を拭ってやりながら
「対馬兄妹あいつら本業は医者やろ?」
俺は朔羅の寝顔を見つめて響輔に話しかけた。
対馬兄妹ってのは大阪で世話になった医者のことだ。小さい頃から兄貴たちと喧嘩するたびにお世話になってた。
まぁ苦い思い出のある人物っちゃそうだな。
でも悪いヤツらじゃないのは確かだ。
まぁちょ~~~っとばかり変わってはいるが、医者ってのはどこでもそうゆうもんか。
「今流行りのフリーランスってヤツですよ。腕がいいからどこでも稼げる」
「ヤクザ専門やろ。闇医者には違いねぇな。
で?どうする??
どうやって連絡取る」
「ケータイは危険です。俺のPCから彼らの緊急連絡先に繋げます」
響輔は手慣れた手つきでPCのキーボードを叩き、俺にもイヤホンマイクを手渡してきた。
「俺のPCからも安全とは言い切れません。
タブレットを経由してスクランブルも掛けますが、追跡されるのを防止するため通話は一分以内で終わらせてください」
「了解」
俺は短く頷き、響輔と同じようにイヤホンマイクを装着した。



