ドンっ!!
大声を挙げてあたしは戒の胸に両手で作った拳を叩き付けた。
戒は僅かによろけたが、両足でしっかりと立っている。
さっきの冷静な声音じゃなく
「朔羅……?」と困惑したような…弱々しい声だった。
「何だって言うんだよ、お前は!!
あたしが気づいてないと思ったのか!
お前はあたしを避けてる―――退院して以来変だ。
こないだからあたしを見ないし、あたしと距離を置こうとしている!!」
こんなこと――――
言いたかったわけじゃない。
なのに
止まらない。
あたしの目頭にはいつの間にか涙の粒が溜まっていた、
その熱い涙はまばたきをするとすぐに溢れて出て零れ落ち、あたしの頬を冷たく濡らす。
「あたしが何かやらかしたんなら言えよ!」
もう一度怒鳴って戒の胸をもう一度強く突くと
今度こそ戒はよろけずに、一瞬だけ躊躇したもののその両腕を広げてあたしをその胸に抱き止めてくれた。
あったかい
戒の胸―――
何だかとても久しぶりの感触だった。



