「聞いたことある」 タクトは背伸びし、 心地いい声で語り出す。 「シリウスには、ちょっと ロマンチックな逸話があるんだぜ」 「どんな?」 今日のタクトは機嫌がいいからか、 いつもに増しておしゃべりだ。 「シリウスがまだ人間だった時、 とても仲のいい恋人がいたんだ」 「うん」 「二人はいつも一緒だったけれど、 先にシリウスは病気で命を落としてしまった。 シリウスの恋人は、 それからずっと彼のことを思って泣き暮らした」 「……それで?」