「大河!」

「…なに?」

「俺!明日おむかえになった!」



施設に来て二年の時が過ぎた。

僕も涼太も中学一年生になっていた。

相変わらず涼太は太陽のようにギラギラした笑顔で僕に駆け寄って来た。



「…すごいじゃん」

「大河は?おむかえの話いっぱいきてるって聞いたけど!」

「…僕は、まだ、誰かの子供に…なれないよ、」

「ふーん、そっか、そうだよな!」



僕たちがいう“おむかえ”というのは“里子に迎えたい”と申し出た人たちと実際に会ってみることを言う。

そして里子に行くか行かないかを最終的に決めるのだ。

涼太もたまに“おむかえ”がくる。

だけど涼太は納得いかないのか、それとも他になにかあるのか、なかなかお迎えを承認することはなかった。



僕たちは知り合ってもうすぐ二年になる。

だけど僕は、あんまり涼太のことを知らない。

涼太も、僕のことをあんまり知らない。



勿論仲が良くなるにつれ聞きたいことは沢山でてきた。

だけど聞いていいのか、と遠慮してしまう自分がいて僕は何も聞けなかった。

いつも素直になんでも言ってしまう彼も、きっとそれは同じで、僕の“前の家族のこと”はあまり聞いてはこなかった。



「…大河」

「…ん、どうしたの…?」

「…俺が、おむかえを決めたら、寂しいか?」



いつもはヘラヘラと笑っている彼が珍しく真剣な顔をするから思わず黙ってしまった。

すると彼はいつものように笑って「ごめんごめん、なんでもねーよ」と言ってどこかに行ってしまった。

離れていく背中に、僕は少しだけ、喉の奥が締め付けられるようなそんな気がした。