僕はどうして、此処にいるんだろう。

小さな子供や僕よりも大きな子供に囲まれてそう思った。










「今日からみんなのお友達になります、園寺大河くんです」



「みんな仲良くするのよ」と満面の笑みでいうお姉さん。

その声に「はーい!」と声を揃える知らない子供たち。

僕は爪が食い込んで血が出るほどに拳を握り締めた。



此処は所謂“児童養護施設”といわれる場所だった。

理由は様々だけれど此処に来るほどの理由を抱えた子供たちが集っている。

僕もそんな“理由を抱えた子供”の一人だった。



「おい、お前なんで一人でいるんだ」

「……別に」

「別にじゃねーよ、みんなお前と友達になりたがってるぞ」

「…そんなの、知らないよ。」



施設にきてから一ヶ月程たったある日。

いつもの様に施設の中で本を読む僕に話しかけてきた奴がいた。

僕は此処にいるみんなのことが嫌いではない。

むしろみんな優しくて口数の少ないこんな僕にも話しかけてくれる。

みんなで助け合って生きてるようなそんな感じ。



だけれど僕はそんなみんなの一員にはなれないでいた。



「俺、美坂涼太っていうんだ、よろしくな」

「…よ、ろしく…」

「園寺って呼んでいいか?」

「……じゃあ、僕は涼太って呼ぶ」

「なんでお前だけ名前呼びなんだよ!おれも大河って呼ぶ!」



初めてできた友達はうるさい奴だった。

だけれどガハハハと大きな口で笑う目の前の少年の声は不思議と嫌ではなかった。



「大河は今何年生?」

「…小学五年」

「え?五年なの?俺も五年生!」

「……涼太、僕のこと、低学年だと思ってたでしょ…」

「おう!だって小さいんだもん!」



小さな溜息をつく。

素直すぎるのも問題なんじゃないか、と思う。

それでも、僕のような思ったことをなんにも言えない弱虫よりマシなんだろうけど。

「いっぱい飯食わなきゃだめだぞ!」と未だに笑う彼を、少しだけ羨ましく思った。