ドスン



鳥の囀りが聞こえてきた朝。

ベッドに私ではない重みが加わる音が部屋に少しだけ響いた。

その音とベッドの上に増えた重量を夢の中で感じた私はその意識をちょっとずつ現実の世界へと戻していく。



「…お母さん、今日は土曜日だよ…学校、ないよ」



目はまだ眠くてあけられないが口は動かしてみる。

しかし応答はない。

応答がないだなんて、いつもうるさいお母さんじゃ絶対に考えられないことだった手前、眠たい頭に疑問が浮かび上がる。



「…ん、だれ」



微かに目を開いてみればベッドに腰をかけ此方をじっと見ている整った顔が視界に入った。

少しだけ予想外だった訪問者にびっくりして思わず目を見開く。



「…お、おはよう」

「…」



応答はない。



「…えっと、大河くんだよね、?」

「…」



応答はない。が、少年はコクリと首を縦に動かして見せた。

クールな子なのかな…なんて思いながらも私はベッドから身体を起こす。



「わ、私の名前、知ってるかもしれないけど…ハコっていうの。」

「…」

「昨日会ったばかりだから、まだお姉ちゃんだなんて思えないだろうけど…、これからよ、よろしくね」

「…」



ぎこちない自己紹介と一緒に右手を差し出してみれば昨日から義弟になった少年はビクリと肩を揺らして見せた。

こ、こわがらせちゃったかも…と再度少年を見てみれば目を泳がしながら固まっていた。

一瞬手を引っ込めようかとも思ったが、それを行動に移す前に少年が動く。



「…ハ、コ……よろしく」



聞こえるか聞こえないかくらいのギリギリの小ささではあったが少年は確かにそう言って私の右手に自分の右手の人差し指だけを当てた。

思わず固まる私。

予想外にいきなり名前で呼ばれたとか、ため口だったとか、そんなことなんかよりも正直、目の前で未だに目を泳がせながら顔を真っ赤にしてる少年が可愛すぎて仕方が無かった。

お、弟ってこんなに可愛いものなの…?



「…か、」

「…??」

「…かわいい…!」

「…!?」










(緊張で震えている君の右手の人差し指を、)
(優しく握ってみれば少年はまた顔を真っ赤に染めた。)