「それでは氷室家、家族会議をはじめます」



時刻は午後8時過ぎ。

お母さんの言葉を合図に我が氷室家の家族会議なるものが始まった。

勿論のこと議題は私の隣に座っているこの美少年。

いつもはお父さんとお母さんと私の三人で囲んでいるこの食卓テーブルを四人で囲んでいることに少しだけ違和感を感じながらも、私は再度少年から両親へと視線を戻した。



「ハコ、母さんから説明は受けたか?」

「この子が私の弟になるとだけ聞いたけど…詳しくはまだ。」



久しぶりに見た真剣な父親の顔に戸惑いながらも「お父さん待ってたから…」と言えば「そうか」と頷いた。



「いきなりすぎて状況が飲み込めないとは思うが、母さんから聞いた通り大河は今日から氷室家の子供になる。」

「それは…養子に迎えたってこと?」

「そういうことだな。だけど養子とはいえ此処に来た時点で父さんも母さんも大河のことは我が子だと思っている。正直、もう養子なんて関係ないんだ。」

「…お父さん」

「ハコにも事前に言うつもりだったんだが状況が少し変わってな…。」

「ハコちゃん動揺させちゃってごめんね。だけどうちの子に迎えたからには大河くんをお母さんもお父さんもハコちゃんと同じくらい大事にするし守っていくつもりなの」

「…お母さん」



多分私は今とても不安げな顔をしていると思う。

お父さんの言葉もお母さんの言葉も真剣そのものでそしてとても温かかった。

本気なんだってことくらい長く一緒にいるんだからわかる。

だけれどやっぱりどこかまだ状況が飲み込めていない自分がいて、受け入れてあげられていない自分がいて、まるで一人だけ置いてけぼりにされたようなそんな心境だった。



「今すぐに、とは言わないよ。だけどハコも少しずつでいいから大河のお姉さんになってやってくれ。」



そう言って私の頭を少し乱暴に撫でたお父さんの手はとても温かかった。

私には兄弟と呼べる人間はいない。

だからずっとお父さんもお母さんも私だけのお父さんであり、お母さんだった。

だけどもうその関係は大きく変わってしまったわけで…。

そう考えると高校生とはいえど少しだけ寂しく感じた。










(部屋に戻る時に見た義弟の手は、)
(強く握り締められていた)